初秋の広場で覚え直すブランコは腕をつかってこぐとか
アイシャドウ下地マスカラ小さな手で触れるとみなままごとになる
ミスチルを聴いてたわたしミスチルの鳴る店で子とラーメンを待つ

誰かにも私にもあるひかりのような時間たちカーテンの午後
古ぼけた朝日がふちどる私たちの影はいまだ屋上にある
空の端から端までをなぞってるあなたにはかられたくないので

完全なかたちとはなに 透明なまるいしずくを半分に割る

鈍色の海はうつくしいそれ以外はうつくしくない(そうですか)

それぞれが尊重されるこの海でだまっていることは罪らしい

わかってる とつぜん踊ったりしなくてもみんなうれしいってこと

最強の物語 最強の仲間とわたしはお花を摘みにいく

爽やかに穏やかにいこうそして野原のうえに怒りを敷こう

あたらしくおおきくつよくはやくあるものを眺めて奥歯で砕く

わたしの特技はみどりの草はらをみどりの草はらと思うこと

このさきも時雨はつづくようなのでわたしは夜のアマゾンをゆく

生きることから逃げるためこころごと眠ってからおきた日曜日

後悔を銀のレードルですくって炭酸水で割ってのみほす

書きつける ひとりで生きていくようにスレートに傷をのこすように

あいいろのうみの波形をなぞるときすべての音は森へとかえる

白い紙、愛、くちなしの花 信仰をもたないわたしの教会

わたしのうたは甘えからできていてわたしも甘えからできている

あたえたいものなどないとおもってるすべって落ちる夏至のそうめん

夕月夜 世界を読んでいるうちにわたしの世界が終わっていた

いきていく透明な眼で夏みたく単純でいい生き方をする

わたしにはわたしのとびらあなたにはあなたのとびらと手帳に記す

暮の春日々も花のように褪せる
ペダル漕ぐ腕に冷し風五月
車窓越し屋根低くして梅雨晴間
川べりの虫を払いて夕涼み
おはよう
あたらしいわたし
あたらしいあなた
それぞれに目覚めて
それぞれに眠る
消えない月はあなたの右に
見えない太陽はあなたの左に
過去からやってきたひかりは
誰よりもわたしたちのことを知っている
だからゆきましょう
安心して
眠りましょう
空の端から端までをなぞってるあなたにはかられたくないので
それぞれが尊重されるこの海でだまっていることは罪らしい
鈍色の海は美しいそれ以外は美しくない(そうですか)
最強の物語  最強の仲間とわたしは花を摘みにいく
新しく大きく強く速くあるものを眺めて奥歯で砕く
個人的で古くさくて懐かしいものの匂いを封する作業

これは桃  ゆるやかな曲線みたく切実さもあなたごと忘れる