古本屋で購入した『京都の迷い方』をパラパラと読む。作家からライター、大学教授まで、50人がそれぞれの分野から見た京都を語るというもの。発行は2009年。まだ営業していた頃の五条楽園のレポートが載っていたりして面白い。

その中で「メッセンジャーkaze」という自転車便の会社(お店)がとりあげられていた。けれども聞いたことがなかったので検索してみると、ブログがヒットした。そこには「さよなら、Goodbye、Adieu、告别了、KAZE」というタイトルがあった。記事をクリックすると、メッセンジャーkazeは閉店したこと、告別式を行うことが記されていた。

次の記事は告別式の場所を知らせるものだった。告別式の集合場所は「出町デルタ」だった。その文字を見たとき、懐かしさが一気に押し寄せた。

(京都に限るかは分からないけれど)京都には若くて新しいお店、会社、団体が次々とできる。しかしそれらは多くの場合、長くは続かない。前向きな理由もあれば後ろ向きな理由もある。会社の解散を告別式という言葉で表し、けれどもそのじつパーティーをするという行為に、そんな京都の雰囲気を思い出した。

そしてその告別式をデルタで行うという行為もまた、京都にいる人々にとってデルタがどんな場所かを象徴している。

「告別式の場所:出町デルタ」の一文にはそういった京都の雰囲気が詰まっていて、見た瞬間、心にデルタの風が吹いた。自慢の自転車を押してくる参列者たち。レモンイエロー、夏の朝のようなブルー、カラフルな車体はひかりを照り返し、ひかりは各々の瞳に集まり、今も像を結び続けているのだろう。やってくるもの、でていくもの。京都を流れていく人たち。デルタはその集積なのだ。

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