grapefruit vol.1「さんかく」 あとがき
「grapefruit」をお手に取ってくださりありがとうございます。こうしてあとがきを読んでくださっていること、とても嬉しいです。
この「grapefruit」は「女の子」をテーマにした小説を掲載するリトルプレスです。
そうして女の子の物語を読んだり書いたりしてきた私ですが、女の子ってなに?と聞かれると、答えに窮してしまうというのが現実です。少女と女の子の違いは?なんて聞かれるともうお手上げです(ここでは「女の子」に統一して表記しています)。無邪気?儚い?残酷?私はいまだに自分の言葉で女の子というものを語ることができません。私がそうして一言で表してしまえば、それが女の子の自由を奪ってしまうような気がするのです。
それでも、というか、だからこそ私は女の子を書いていたいのかもしれません。さらりと一言では表せない女の子というものを小説に書くことで、私は女の子のことを分かりたいのかもしれない。
女の子のことなんて分からないよ!な私ですが、女の子を描くにあたって明確に意識していることがあります。それは決めつけに抗い、生と自由を肯定する物語にするということです(と書くと大げさですが……)。
自由には常に責任というものがつきまといます。しかし女の子は女の子というだけで必要以上の責任を負わされていると私は思っています。どうして女の子は着飾ったり、書いたり、表象するだけで――もっといえば生きているだけで――搾取だとか消費だとかいう単語がつきまとうのだろう、その単語を頭に入れて、常に気を張って、そこに目配せをしておかないといけないのだろう、どうして何も考えずに生きていくことができないのだろう。そんなことをよく考えます。
そうした世界で、女の子は強くならざるをえない。けれども強くなければ、連帯しなければ、戦わなければ女でないとでもいうような風潮に、私はノーと言いたかった。悪いのは世界の構造なのに、女の子そのものが悪いみたいに扱うのは、それこそ責任を女の子自身に押し付けることにほかならないと思ったのです。
この雑誌をつくるきっかけになった氷室冴子氏に敬意を表して。そしていつもご支援くださっているあと―すさま、この雑誌が楽しみだと声をかけてくださった方々におおきな感謝を。
「grapefruit」をこれからもよろしくお願いいたします。
淡々文庫 りん
2021年9月26日
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