しあわせな季節

熱い空気に混じる一筋の冷たい風。季節の変わり目はなにをしていても懐かしい。私はこの頃の京都が好きだった。紅葉より、どこにいてもちゃんと高くに見える空の水色が、私のなかの秋の京都だ。部屋のドアがずらりと開け放たれた寮の廊下、屋上から見える家々。具体的なことは一つも思い出せないのに、いいことばかりではなかったのに、自転車で風をきれば懐かしさに心が浮きあがる。しあわせな季節だ。

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