深沢仁『この夏のこともどうせ忘れる』

年末におすすめいただいて読んだ「この夏のこともどうせ忘れる」面白かった〜。僕と君、私とあなた、少年少女ふたりの夏を切り取った短編五篇。と書くと爽やかだったり感傷的な物語を想像してしまうけれど、本作は違った味わいがありました。
作中で築かれていくふたりの関係は現実を置いてけぼりにして、どこかおとぎ話めいていて。「ふたり」が持つ濃密な雰囲気がどの作品にもあって、明確に着地することなく終わり、読み終わった後は夢から覚めたような心地を覚えて、ああこれが夏だよな、なんて思う。そして大人になった自分は、ふたりとも「この夏のこともどうせ忘れる」のだとも思うのです。

“世界でふたりにしか見えない現実なんて、現実だって言えんのか。なんかもう適当な夢なんじゃないかと思えてくる”

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