北村薫『いとま申して』

北村薫『いとま申して』を読み終える。筆者の父の日記からその生涯を読み解いていく、あくまで小説。大正昭和の風俗、特に中学生が雑誌投稿にかける思いが分かる部分が面白かった。

無駄がないけれどどこか味のある文体は、なんとなく中学あたりの国語の教科書に掲載されている読みものを思い出して、ああこういうの苦手だったなと思い出す。嫌いじゃない、どちらかといえば奇の衒いがないという点で好きなのだけれど、あまりにもすっきり淡々としているから引っかかる部分がなく、目が滑るのだ。

書くようになった今でこそ、こなれていてかつすっきり見せる文章にはとても技量が必要というのが分かるのだけれど、やっぱりなかなか意味が頭に入ってこない。何度も同じ部分を読み直し、読むのにかなり時間がかかった。

一方、北村氏のファンであれば楽しめたかもしれないとも思った。書いた人への興味の有無に面白さがかなり左右される。結局、日記とは自己を省みるためのもの。自分だけのものなのだ。

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