増山実『ジュリーの世界』

増山実『ジュリーの世界』読み終える。レトロ京都好きにとっては外せない一冊だった。昭和京都の豆知識的なものの組込み方が巧みなので、あの頃の京都を知っている人も、そんなこと知っとるわい!とはならないと思う。知識が絵として立ち上がってとても面白かった。

昭和という時代を感傷に浸るでなく、ほんわかとでもなく、かといってえげつなさ荒々しさを強調するでもなく描ききっているところが良かった。落ち着いた視線と淡々とした語り口が信頼できるなあと思いながら読んでいた。それでいて泣けるところは泣けるんよねえ。少年とジュリーが六角公園で極楽鳥を描くシーンがとくに良かった。

誓願寺のおもての石柱は迷い人探しの目印で、一方の面に探し人が貼り紙を、反対の面に迷い人が貼り紙を貼るわけだけれども、増山さんはそれを知っていて書いたのだろうな〜と勝手に思った。混沌とした河原町で何かを探し、何かに迷っている人たちの物語。

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