冬の光

朝の十三。単行本に指を挟んで人々のあいだをすり抜けていく人。子どもを抱いてエスカレーターに乗っているスーツ姿の男性。腕にしがみつく子どもの瞳の下にくっついた氷のような涙。モノレールのホーム。どこかから漂ってくるコーヒーの匂い。真っ白な朝の光、夕方の空気にオレンジが溶けたような光。こんなにも豊かで美しい冬の光。この光景もいつか忘れられる。

0コメント

  • 1000 / 1000