サンタクロース

生まれてからずっと寝つきの悪い子どもだけれども、クリスマスの朝以来、「サンタさん来るよ」と言うとぎゅっと目をつむるようになり、ときどきそのまま眠ることもあった。

今はどうかは分からないけれど、少なくともクリスマス当日は、赤い服を着て髭を生やしたサンタさんなる人物がいることを知ってはいるが、その人物がクリスマスに自分の家にやって来てプレゼントを置いていってくれるということとは結びついていないようだった。朝、枕元に置いてあったプレゼントのプラレールをみてもびっくりした様子はなく、「誰がくれたの?」と尋ねると「ばあば」と答えた。(ばあば=物をくれる人物という認識はすでにあったらしい。実際に買ったのは父と母)

なのに次の日から「サンタさん来るよ」と言うと、サンタさんを待つように目をつむるようになった。最初はたまたま目を閉じるタイミングが合っただけかと思ったけれど、次の日もその次の日もそのセリフでちゃんと目を閉じたから、ちゃんとサンタさんのことを分かっているのだと思った。なんだか少し騙しているような気になったので、しばらくしてから私は「サンタさん来るかな」と言うようになった。正月が過ぎ、節分が過ぎ、各所で雛人形の宣伝が始まった今、子どもはセルフで「サンタさん来ないね」と言い、さっと目をつむるようになった。子どもにとってサンタさんが自分の目の前に現れるかどうかはもうあまり関係のないことで、サンタさんという存在がどこかにいてくれたらまあいいかというような態度だ。この儀式はいつまで続くのだろう。素直に、それはもう単純に、終わってほしくないと思う。

0コメント

  • 1000 / 1000