桜が満開になる前の京都

思い立って京都へ。年末ぶり。子どもが生まれコロナもあって足が遠のいて2年ほど。こうやって思い立っていける距離なのだ、今だって、と思い直すような旅だった。この2年は泊まりが多かったこともあって綿密に計画を組んで出かけていたけれども、今日は行き当たりばったり。無計画は気楽でいい。けれどもあそこもここも行きたかったなと後悔することもあるので、どっちもどっちだと思う。先日、あさイチのインタビューで原田マハさんが「旅は何も決めずに出かける。そういうときにふっとアイデアが降ってくる」とおっしゃっていた。私はまだ欲を捨てきれないから、そういう風にはなれないのだと思う。


河原町に着いてまずキエフに電話をする。森見さんがエッセイか何かであげていたロシアウクライナ料理のお店で、いつか行きたいと思っていたところ。「ロシア料理店」と認識していたけれども、こういう世界情勢になりはじめてロシアウクライナ料理店だったのだと知る。お店オリジナルのテーブルシートにもロシア語とウクライナ語で「ありがとう」「乾杯」などの挨拶が書かれていた。


グーグルマップで見る限り高級そうな店構えだったので子連れは歓迎されないかもしれないと思っていたら、店に着くとすでに子ども用椅子が設置されていた。椅子にはマトリョーシカのシートが敷いてあり、テーブルマットからペーパーナプキンまで現地からの輸入品で揃えられていて、そのこだわりと子どもにもここまでしてくれるのかというので感動してしまった。もちろん大人の食器も右に同じ。お料理も本格的で美味しかった。窓からは右手に祇園閣と東大谷の墓地、左手には大文字の半分が見えた。最後、こんないかにも金を持っていなさそうな親子連れにもウエイターのおじさまがご機嫌伺いに来てくださった。いただいたお店の50周年記念シールはおそらく自家用プリンタで作った手づくり感溢れてたものでそれもまた良かった。ありふれたフレーズだけれども、気持ちが大切なのだと思う。


八坂さんへ参るのに祇園白川を通っていく。桜は3分咲きぐらい。思った以上に咲いていて、週半ばに満開を迎えるのではと思う。観光客は多いが予想よりは少なく、インバウンドの頃に比べたら全然少なかった。八坂さんへ参り円山公園へ。桟敷も出ていてコロナ前を思い出す。


高台寺下に停まる人力車、桜の下で前撮りするカップルと出張カメラマン。はじめて訪れた圓徳院で、縁側に座りガイドさんが話す由来を聞きながら、とても懐かしい気持ちになる。こういうことをしている時間がいちばん好きだった。それが何になるとか、役に立つとか、前に進むとかそんなことを考えず、ここにいた人や場所そのものに思いを馳せること。だから私は同じような場所を今でもぐるぐると回っている。


塩味のさくらソフトクリームを食べ清水寺へ向かう。明保野亭が閉まっていて悲しかった。他にも、新しい店がオープンしている場所に出会ったのだけれども、どれもそれまでどんな店があったか思い出せなかった。思い出せたのは回廊が喫茶ジラフになっていたところぐらいだ。それまでその土地がどう変遷してきたかが分かるサービスがあればいいのにと思う。Googleマップができてからの年代なら不可能ではない気がするのだけど。


清水寺へは行かず五条坂を下る。ずっと行きたかった利き酒処336へ寄る。はんなりIPAをテイクアウト。フルーティで美味しかったし坂を下りながら飲むのも良かったのだけれども、陶器やさんのお店なのでやっぱりイートインしてなんぼだと思った。綺麗なうつわがカウンターの後ろに重なっていた。


それから京阪で五条から三条へ。御幸町通を通り四条へ。歩きながら夕ご飯にいい場所があれば入ろうと思っていたけれども、めぼしいところはなく帰宅。途中、嵩山堂はし本でメッセージカードを、幸福堂でいちご大福を買う。


京都へ行くと必然的に一日の歩数がえらいことになる。満身創痍。

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