「murmur」のこと

00年代、インターネットを手に入れた女の子たちは個人サイトをつくり文章を綴りました。学校であったこと、友達のこと、好きな人のこと。どこに住んでいる誰かも分からない、けれども自分とどこか似た彼女たちの生活を、私もまた文章を綴りながら眺めていました。

やがて大学生になり、個人サイトはSNSにかわり、彼女たちの行方は分からなくなりました。あのころのように、とはいかないけれども、日記と散文と小説のあわいを漂っていたあの文章を、あの空間を表せたらと思い、ペーパーを作りました。

名前は「murmur」です。小説を書きながら、本を読みながら、2才の子どもと過ごしながら捉えた日常の色をかきつけています。ただの日常、ただの生活。

おそらく子育て日記や読書日記とカテゴリ分けをした方が多くの人に届くでしょう。けれどもそうしないことで届くところに私は届けたかった。なんの名もない一女性の生活を書いたものなど誰が手の取ってくれるのかと何回も思いましたし今もときどき思います。そんなときに思い出している島田潤一郎さんの著書『本屋さんしか行きたいとこがない』内のフレーズをここに引いておきます。

“たいせつなのは、個人的なことだ。その人にしか感じられない喜びや悲しみ。あるいは、ほかのひとからすればどうでもいいような人間関係。そういうものが守られなければいけないのだと思う。”

このペーパーを置いてくださっている自由港書店さまにはほんとうに感謝しています。足の運べそうな方はぜひ訪れてみてください。海の気配がする素敵な書店さんです。おいてもらえる場所はこれからゆっくり増やしていきたいと思っています。

あのころの彼女たちも大人になり、仕事をしたり結婚したり子どもと過ごしていたりするのかもしれない。いつかどこかで彼女たちと出会えたらいいなと思っていたりします。


今は日記!って感じだけれども、今後はそれこそ日記と散文と小説のあわいのようなものも書いていけたらなと思っています。ペーパーはできれば続けて作りたいと思っているし、インターネットの日記は今のところずっと書き続ける予定です。今は子育てのことを書いているけれども、そのうち介護のこととか書くようになるのかなあ。そのときどき、お好きなタイミングで手に取ってくださると嬉しいです。

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*置いていただいているお店(五十音順・敬称略)
恵文社一乗寺店(京都・一乗寺)
古書善行堂(京都・銀閣寺)
自由港書店(兵庫・須磨海浜公園)
ハニカムブックス(兵庫・花隈)
フリーペーパー専門店はっち(大阪・中津)

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