春の気配

空気に春の気配が織り込まれている。どこかで触れたことのある懐かしい空気。季節の変わり目はいつも何かを思い出す。そしてそれを教えてくれるのは空気だ。目に見えない、手にも掴めないもの。

東山の、特に円山公園の桜が咲く前、宮川筋のしっとりとした石畳、川端沿いの冷たい風、下宿を出たときの涙。新年度が始まる前の、嵐の前の静けさ。京都という器の中身はゆっくり入れ替わっている。そういう空気が好きだった。それを私はどうして伝えられないのだろう。

現実的な選択とはなんだろう。今の私には夢と現実の境目が分からない。

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