ベニシアさん

ベニシアさんが亡くなられたことを知る。偶然「猫のしっぽカエルの手」を見かけて以来、日曜の6時は必ずNHK教育をつけるようになった。その頃すでに番組は再放送。ときどき撮り下ろしがあるような形で、最も近い放送(といっても数年前だった気がするけれど)でのベニシアさんの様子は目も見えずひとりで出歩くことも難しい状態のようだった。それでも友人と歌を歌ったり、義理の娘さんに口伝えで料理を教えたり、今の自分にできることをされていて、できなくなったことに縋らず、老いることを過度に恐れたり悲観されていなかったのが印象的だった。

自然の摂理に抗わず、しかし意志は手放さない。そういう彼女の生活に相対する姿勢に私は憧れていて、現在の家をリノベーションするときまず参考にしたのが彼女の家だった(本も数冊読んだ。結局取り入れることはできなかったけれど)。どこかへ出かけるときは、あのあたりベニシアさんが訪れてなかったっけ、でもお店の名前覚えてないなとなり「(地名) ベニシアさん」でよく検索をかけた。公式のアーカイブはないので、ヒットした先達のブログを読むことになる。それらはだいたい本放送が行われていた2000年代後半から2010年代のもので、同志のベニシアさんへの敬意とまだ牧歌的だったインターネットの雰囲気に触れては検索するたびあたたかな気持ちになっていた。先月もベニシアさんの足跡を追ってブルーパロットへ行ったばかりだった。

次の撮り下ろしはいつだろうと思っていたぐらいだったので、喪失感がすごい。もうベニシアさんに会えない。とても悲しい。その一方で、ベニシアさんはそんな人々の上で、死ぬのもまた自然なことだよと言っているのだろうなと想像する。

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