honeycomb BOOKS*
さんちかの古書即売会へ行く。下鴨の古本まつりに比べるとこぢんまりとした古本市だったけれども、それでもやっぱり自分にははかることのできない時間と場所を越えてきた書物たちに囲まれるのは眩暈がする。とうに色褪せたクリーム色、錆びた赤茶の滲み、毛筆体の背表紙のそれをほいほいカゴに入れている院生らしき男の子をみてまた眩暈がする。
その中から見つけた、(多分)もう筆を置いてしまった(折ってしまったとは言いたくない)大好きな作家さんのサイン本と『京都二十景』という本を持ってレジに並んだ。『京都二十景』の版元はおそらく今でいうJTBパブリッシングなのだろうけれども、寂聴さんや奈良本先生が寄稿されていて題字は岡本太郎氏筆という、京都のプレゼンテーション本(と言っていいのかしら)にしては骨太で豪華。と思うけれど当時はそういう感覚ではなかったのかもしれない。1967年発行。
のちにハニカムブックスさんへ。東野翠れんさんと湯川潮音さんの「風花空心」、ミルブックスさんから出版されたコパンサンク「京都のパン屋さん」、その隣には木村衣有子さんのZINE、学生時代にどこかの古本市でたまたま手に入れた「サルビア歳時記」のシリーズ本「サルビアつれづれBOOK」、くみこんの「いっぴき」。そして「Olive」、その隣には「森ガールMOOK」。あのころインターネットで知ったかわいいあれこれ、学生時代に足で稼いで知ったあれこれが瓶詰めになって、今でも培養されているような空間に心からときめいて、ほっとした。自分が追ってきたものはこれこれ、これだったんだよ〜という安心感。古書まつりでくらくらした反動で5冊も買ってしまった。必ずまた行くと思う。そして古本まつりも、また行ってしまうのだと思う。
もうずっと何者にもなれていない自分と確固たる自分を行き来している。これは終わることのない儀礼なのだとやっと気づく。
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