尾形亀之助『カステーラのような明るい夜』

読みながら浮かんだのは「生活に染みついた孤独」という言葉だった。編者の西尾勝彦さんははそれを「永遠の淋しさ」と表現されている。内から外へ向けた視線で描かれる詩は少し日記と似ていて、ときどきとぼけた顔を覗かせながらもどこか淋しい。何をしていても何を見ていても孤独はそこにあるのだと語る。そしてそれは現在自分が見ている景色に自然と重なっていく。


印象に残った一篇の一部。


花や星で飾った恋文の夜店を出して
恋をする美しい女に高く売りつけます


「商いに就いての答」


花・星・恋・夜とロマンチックな言葉が連なる一文の後の「恋をする美しい女に高く売りつけます」という残酷な一文。この落差が商い。そして商いの支える社会。

もう一つ、好きな一篇を引用します。


私が電車を待つ間
プラットホームで三日月を見ていると
急にすべり込んで来た電車は

月からの帰りの客を降ろして行った


「月夜の電車」


自分に合う詩を見つけられて嬉しい。それは自分のお守りのようになるから。読み終えてから、もっと詩を読んで、そういうものを見つけたいと思った。そして自分も書いてみたいと思った。

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