若松英輔『本を読めなくなった人のための読書論』

『本を読めなくなった人のための読書論』読み終える。先日読み終えた同居人から借りたもの。批評家であり詩人でもある若松さんの言葉はやわらかく懐が深く、安心感を覚える。以下、心に留まったフレーズ。

書くという経験でもっとも重要なのは、「うまい」文章を書き上げることよりも、自分という存在を感じ直してみることなのです。むしろ、「うまく」書こうとしたとき、自分の心をよく感じられないことも分かってきました。「うまく」書こうとする気持ちが、心の深みへと通じる扉を見えなくしてしまうのです。P41

読書への態度は、人生への態度と似ています。読書を楽しんでいる人たちの多くは、自分の読みが、不完全であることを受け入れているのです。そして、誰かと競争するように読むことも止めています。P113

不要なものがあれば、それを選ばなければよいのです。そして、ほんとうに必要なものを見つけたらそれを愛しめばよいのです。P131

直に「物/言葉」にふれればそこに意味をありありと感じることができる。だが、そのためには三つのことに気をつけなくてはならない、と柳は言います。一つ目は思想。二つ目は嗜好。三つ目は習慣です。P137

読まなければならないものも、語らなければならないことも、私たちにはないということ。窮屈になってしまった考え方を一度ほぐしてくれるような本。このあいだ読んだ『水中の哲学者たち』然り、自分を元いた場所へとかえしてくれるような本に出会えて嬉しい。

週末、この本を買った近所の本屋へ行こうと同居人と話した。

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