森絵都『永遠の出口』

『永遠の出口』読み終える。これを読んだ高校生の私は号泣したのだけれども、どこで号泣したのかがちっとも思い出せない。読み進めながら、ここだったかな、と見当をつけるもなんか違う気がする。当時自分も恋をしていたし保田くんとの恋のところかなと自分を納得させようとしたところで、春子との別れのシーンに差し掛かり、ああ、ここだったかもしれないと思い出す。


私たちはまたすぐに別の誰かと出会うだろうし、何度も別れることだろう。ただし、幼い日々の記憶をこんなにも分けあった友達とは、もう二度と出会うことがない――。 P320


あのころは、現在という一点だけを見つめ、燃やして過ごしていたとつい思ってしまうけれども、あのころはあのころで後ろを振り返って、もう二度と出会うことのないものを思って涙することもあった。切り貼り継ぎ足しした現在から見た過去を、一度解いて、大きな布にして目の前に広げてくれるような、鮮やかな小説だった。高校生のときもそう感じたし、今回も変わらずそう感じた。これを読めば過去に戻れる。

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