氷室冴子『冴子の母娘草』

『冴子の母娘草』読み終える。母(そして父)の心理の洞察がとにかく鋭い。それを怒りにまかせず、驕るでなく、かといって寄り添うでもなく、あっけらかんと書いてのけるのがすごいよなあと思う。母>娘というパワーバランスは本当に絶対なのだろうかと思ってしまうぐらい、対等に渡りあう母娘。でももちろん娘の方が費やすパワーは大きいのよね、そういう意味でやっぱ対等でないよね、などと考える。

そういうことはいわれてあたりまえ、結婚してない女なんだからと。ああいう下品で卑しいこというクソ男の方が正しいのだと。自分で自分の食いブチかせぐより、竹脇無我みたいな、なにかっちゃ女問題おこしてるヤサ男と結婚した方が、女の人生としてはよほど上等なんだと。そういう、そういうことなのねーっ! P104

男性優位な価値観は知らず知らずのうちに内面化されている。そしてそれが女性、ひいては自身を傷つけることになる。その恐ろしさ、虚しさすら痛快に描かれた(こんなふうに描けるようになるまでどんな過程を経たのだろうと思う)空港のシーンが印象的だった。

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