紅玉いづき『サエズリ図書館のワルツさん』

『サエズリ図書館のワルツさん』読み終える。電子書籍が普及する今の世で、なぜ本なのか、なぜ紙なのか、が語られた本への愛に溢れた物語。

私も紙の本(この言い方もあまり積極的には使いたくないなあと思ってはいるのだけれど、これしか言い方がないので使っている)を好んで買っている。電子書籍で買うのはフォロワーさんの個人出版か漫画ぐらいかな。漫画でも良かったら紙で買いなおすこともある。もっとも買うよりも図書館で借りる方が多いというのもある(わが町にはまだ電子図書館は導入されていない)。けれどもなぜ紙なのかと問われると「なんとなく」としか答えられない。その「なんとなく」が『サエズリ図書館のワルツさん』では明確に、詳細に言葉に起こされている。その上でこうも語られる。


「どうして本なのか。その問いには、はっきりと答えられません。でも、わたしの宝物が、本でよかった。そう思います」P135


言葉にならなくても大切だとか、好きだとかが、実感としてそこにあるならそれでいい。ワルツさんの、そして筆者の本に対する素直な愛の表現に、読書って難しいことじゃなかったなあと初心にかえる心地がした。目の前がひらけて、その先で書物の海が陽光を受けてひかっている感じ。


とはいえ作る側にもなった今、電子書籍のメリットも大いに感じている。元手が要らないうえにずっと売り続けることができる(在庫管理が不要)のはかなり大きいと、電子も紙もつくってみて思う。というか経済的なことだけ考えれば電子書籍一択だ。けれども私は紙の本もずっと作り続けるのだろうと今なんとなく思っている。

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