新年度

3月はずっと2年間お世話になった保育園のことを考えていた。卒園の日は絶対泣くだろうなあ、泣くのは嫌だなあ、そもそも卒園させたくないなあ、泣いてしまうし口頭では上手く感謝の気持ちを伝えられないからどうやって伝えようかなどなど。身近な人に伝えたいことを適切に伝えるということをずいぶん怠ってきた気がする。それは言葉の使いどころとしてまっとうで、今の自分にしっくりきて、何度でも帰りたい場所だった。

結局、手紙は卒園の前日に書いた。ずっと考えていたのに。そして大変お世話になりましたみたいな、よくある定型文になった。ずっと考えていたのに。味気のない手紙を封筒にしまいながら、ああ言葉ってこうだったなと思った。自分が抱えている心の半分もあらわすことができない。それが自分以外の人の目に映るのだから、その心は、もとの心の何分の一なんだろう。だから心は、その都度伝えていかなくてはいけない。愛は細やかさ、愛は丁寧さ。愛には、時間がかかる。

今日から子どもは新しい保育園へ登園し、私は自転車通勤に戻った。新しい通勤路を探りながらゆく道はそこかしこに桜並木があって、通り抜けるごとに自分も新しくなっていく気がした。新年度にふさわしい日和だった。

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