鎌倉殿の13人(第47回)

昨日の鎌倉殿も素晴らしかった。「自分の想像を超えたところで息子が自立する瞬間」「自分の想像を超えたところで姉が手を差し伸べる瞬間」つまり一人で政治をまわしてきた義時に心から頼れる人間が戻ってくる瞬間、久しぶりに人と心を通わせた瞬間をかの有名な演説の場面に据える采配。人と人が分かり合える瞬間というのは想像を超えたところにあり、刹那的で脆くほとんど幻想だ。だからこそ尊い。そして分かり合えたことに気づく瞬間は美しい。義時の涙、「生真面目な人なんです」という言葉を聞いた時の泰時の表情。美しく感動的な場面だった。それでいて政子の話の筋も合理的なのも良かった。

今回で北条家の家族の物語、義時が武士の世の頂点に立つ立身出世の物語はひと山超えたのではと思っている。思えば新選組も奥多摩の一族の物語、一農民が武士になる立身出世の物語だった。そしてもう一つの大きな物語が、かっちゃんとトシ、親友の物語。新選組で締めに選ばれたのはこの物語だった。本編最後の台詞、斬首される前の近藤勇は「トシ」と親友の名前を呼ぶ。その「トシ」=平六が今回はどう動くのか。三谷さんが描く至高のバディとはどういうものなんだろう。そしてどんな物語で閉じるんだろう。

新選組で描かれた家族、立身出世、親友の物語を更新していっている鎌倉殿。そこに新たに加わったのは女性の物語だと思う。正直新選組は、多摩の家族とお梅さん以外は男性のパートナーとしての役割を負っていたという印象が強い(総集編でも恋愛パートはことごとくカットされてた……。でも私はみんな好きだよ……太夫も明里もおまさちゃんも……)鎌倉殿では政子や巴御前のような力強い女性だけでなく、博愛的な八重さんや義高のことを思い死んでいった大姫もみな自分の足で生きてるという感じがした。大姫の「好きに生きていいなら死ぬのも自由でしょう」という台詞はそれを体現していたと思う。役割先行でなく、分かりやすい力強さにすべてを託すでもない姿勢がすごく良い。

次週に関していえば、今まで徹底して因果応報の話だったからのえさんがあのまま終わるわけないと思っている。いやでも今まで小四郎を出世の道具としてしかみてこなかったしっぺ返しと考えたらあのシーンでラストでも違和感はないか。そう思わせるぐらいに菊地凛子さんの表情が凄まじかった。

バッドかハッピーかで考えてしまうけれども、それを超えたところにエンドはあるんだと思う。寂しくはあるけれども楽しみでもある。来週の今日は仕事が手につかないだろうな。

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