2021.01.26 12:59三宅香帆『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』小説の書き方本ならぬ「読み方本」なのだけれど、書く人にも響くことが沢山あるのではないかなと思う。“よくある話でも細部を語れば文学的になる”とか“小説は現実逃避なんかではなく、日常を戦うためのものでもあるし、日常と戦ってくれる存在でもある”とか。私は三宅さんの読書や映画の感想ツイートがとても好きで。物語を客観的に見つつ、自分に引き寄せて語られているからとても響くのです。そういう、小説の愛し方(という...
2021.01.24 16:53パンと理想無事に4月から保育所に入れることになった。約2ヶ月後には職場に戻ることになる。根っからの仕事したくない人間なので、落ちたら仕事せずにすむ……という気持ちがまあまああった(こんなこと書いたら怒られそうですが)。だから入所が決まったら、職場に迷惑かけずほっとする気持ち半分、仕事しなくてはいけない絶望半分、という心待ちになるだろうなと思っていた。けれども実際は、ほっとする気持ちの方が大きかった。そしてそ...
2021.01.21 14:46深沢仁『この夏のこともどうせ忘れる』年末におすすめいただいて読んだ「この夏のこともどうせ忘れる」面白かった〜。僕と君、私とあなた、少年少女ふたりの夏を切り取った短編五篇。と書くと爽やかだったり感傷的な物語を想像してしまうけれど、本作は違った味わいがありました。作中で築かれていくふたりの関係は現実を置いてけぼりにして、どこかおとぎ話めいていて。「ふたり」が持つ濃密な雰囲気がどの作品にもあって、明確に着地することなく終わり、読み終わった...
2021.01.16 17:40青羽悠『凪に溺れる』「凪に溺れる」、熱くて若くてドラマチックだった……。亡くなったミュージシャン十太を中心に同心円状に広がる波、その一つ一つを内から外に向かって繋げながら描いて、最後ふたたび一気に中心に迫る構成にページ繰る手が止まらんかった。神様、希望、夢、と見上げる存在として語られていた十太を最後の語りで同じ目線の高さに降ろしてきたのが良かったな~。ここで波紋の一つとして描かれている人たちもまた波の中心で、何にもな...
2021.01.12 16:28当たり前を問い直していくこと昨日散歩へ出かけると振袖を着た女の子やスーツを着た男の子たちがちらほら駅前にいた。数えるほどしかいなくて驚いた。自分の子どもは、成人式のために髪のばすの、とかそんな会話しなくなるんだろうな、成人の日にはみんな里帰りして集まって式を挙げてたの?なんで?っていつか訊かれるかもしれないな、とかそんなことを考えた。「人と会える=しあわせ」という前提があって私たちは「悲しいけれど今は我慢しよう」とか言ってい...
2021.01.10 15:00新刊『それから』の通販を開始しました文フリ京都の中止、テキレボの延期に伴いBOOTHにて通販を開始しました。BOOTH:https://rinrinring.booth.pm/既刊『あのころ』は諸事情により1/17をもって販売を終了します。以降は通販もイベントでの頒布もしませんので、この機会にぜひお手にとってみてください。
2021.01.08 16:07千野帽子『文藝ガーリッシュ』再読。志しは高く心は狭い文化系小娘のためのジャンルとして「文藝ガーリッシュ」を掲げ10のテーマに沿って該当図書を紹介する本書。選ばれた本は明治から現代に至るまで様々で、一貫性があるけれども一言では表せない(一つ言えるのは主人公が皆女の子、というところ)。コラムからは教養主義への批判が見てとれて、この選書はそれへの対抗のようにも思えます。「女」のためではなく「私」のための読書案内本です(私、の性別は...
2021.01.05 13:46好井裕明『他者を感じる社会学 (ちくまプリマー新書) 』差別を考える基本に始まり、部落、ジェンダー、性的志向、障害、民族など身の回りの差別について考えていく一冊なのだけれど、差別を断ずるのではなく、差別を考えようという一貫したメッセージにとてもほっとした。百合界隈にいると、ジェンダーや性的志向についてのツイートをよく目にするし、争いが起こっているのもしばしば見かけるのだけれど、とあるツイートを見たとき、その人が怒っている理由が分からないことがあって。も...
2021.01.03 01:54フランク・ヴェデキント『ミネハハ』「女の子」と「少女」は違うと思いつつも明確に言葉にできずにいるのだけれど、ここで描かれている、老いたものを嘲り、成長をけがれのように感じ、生殖を恐れる彼女たちは間違いなく「少女」だと思った。閉ざされた白い家で暮らし、水と戯れ、踊る少女たちの顛末は、今読むと少女に幻想を求める人々への皮肉のようにも捉えられてこれほんまに百年前の話なんか?という感じ……。老いた主人公が過去を振り返る形で語られるのだけれ...